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民事再生|借金・債務整理

弁護士がまとめた「民事再生」のQ&Aです。

Q 民事再生手続とは何ですか?

民事再生手続とは、裁判所の関与のもと、借金を減額し、また、残りの借金を分割返済していく法的手続を言います。

自己破産と民事再生は、裁判所関与の法的手続という点は同じですが、次の点で大きく異なります。

破産法の目的は、①財産の清算、②債務者の経済生活の再生です(破産法1条)。債務者の利益だけでなく、債権者の利益も考えています。
他方、民事再生法の目的は、債務者の事業や経済生活の再生にあります(民事再生法1条)。つまり、債務者の利益だけを考えています。
この目的の違い等により、たとえば次のような点が異なってきます。

破産手続と異なり、民事再生手続では、
財産の清算がない
②警備員、税理士、公認会計士など資格制限とはならない
③ギャンブル等の破産法の免責不許可事由があっても利用できる場合があります

なお、この記事では民事再生手続のうち、個人の方が対象となる、①小規模個人再生、②給与所得者等再生を扱います。

Q 小規模個人再生手続は、どのような手続ですか?

小規模個人再生手続とは、民事再生手続のうち、個人向けの簡易な手続になります。

たとえば、スカイマーク株式会社が民事再生を申請しましたが、民事再生手続は、大規模な会社でも対応できる大掛かりな手続です。そのため、個人が利用しようとすると準備等がかなり大変になり、利用が制限されてしまいます。

たとえば、風邪(かぜ)を治すために、大学病院で、最新の精密検査と数十名の医師による診療を受けようとするようなものです。
そこで、個人が利用しやすいように、小規模個人再生は、個人の簡易な民事再生手続として用意されました。

小規模個人再生が利用できる条件は、次のとおりです(民事再生法221条1項)。
①利用する者が会社等ではなく、個人であること
②安定した収入の見込みがあること
③借金の総額が5000万円を超えないこと。ただし、借金の総額は、住宅ローン等を含まずに計算できます。

借金の総額が5000万円を超えるような場合には、通常の民事再生手続の利用を検討することになります。

Q 小規模個人再生手続のメリットは?

小規模個人再生手続のメリットですが、概ね次のような点になります。
①自己破産手続を回避、②借金の減額、③債務の期限の猶予
以下、具体的に見ていきます。

まず、①自己破産手続の回避ですが、小規模個人再生手続によって借金を返済できれば自己破産を回避することができます。
民事再生のメリットで説明したように、財産の清算、資格制限等を回避することが可能となります。

次に、②借金の減額ですが、小規模個人再生では次のような形で減額が可能となります(民事再生法231条2項3号、4号)。

手続前の借金総額 減額可能な最大割合 手続後の借金総額(減額が最大の場合)
3000万円(超)~5000万円 10分の9 300万円~500万円
1500万円~3000万円 ※1 300万円
500万円~1500万円(未満) 5分の4 100万円~300万円
~500万円(未満) ※1 100万円
注)1:割合ではなく、最低弁済額を残した金額を最大限で減額可能

なお、借金が100万円以内の場合には減額ができません。借金が100万円又はその付近のケースでは、個人再生手続を利用するメリットは、債務の期限の猶予になります。

また、財産が多額である場合など、自己破産手続で財産を清算した方が債権者にメリットになるケースでは、財産を清算した場合の金額等が最低弁済額になります。

次に、③債務の期限の猶予についてです。最大限の債務の期限の猶予は次のとおりです。ただし、債権者との間の別段の定め等ができれば、さらに期限の猶予が可能です(民事再生法229条2項)。

弁済期 弁済期間
3か月間に1回 3年(特別の事情があれば5年

Q 小規模個人再生手続のデリットは?

小規模個人再生手続のデメリットですが、概ね、次のような点になります。

①債権者の過半の反対があれば成立しない
②借金の一部の返済が必要
③自己破産と比べ期間が長い
以下、具体的に説明します。

まず、①債権者の過半の反対についてです。
「債権者の人数」と「債権額」の両方の点で、積極的な反対が過半数を超えないことが必要です(民事再生法230条6項)。
つまり、債権者の数の2分の1を超える反対者がなく、かつ、反対した債権者の債権の合計が全債権額の2分の1を超えていないことが必要になります。

通常、債権者が回収できる金額は、自己破産よりも民事再生の方が多くなります。そのため、債権者(特に金融機関、貸金業者等)が積極的な反対を行なうことはそれほど多くなく、小規模個人再生手続は多く利用されています。
平成25年の司法統計では、破産以外の手続として一番多いのが小規模個人となっています。

(倒産手続の新受数)
破産 81,136件
(90.4%)
民事再生 209件
(0.23%)
小規模個人再生 7,655件
(8.5%)
給与所得者等再生 719件
(0.8%)
会社更生 6件
(0.0066%)
※パーセントは、倒産手続の合計数89,725件を母数としています。

次に、②借金の一部は返済しなければならないことです。
自己破産をした場合には、原則として全ての債務が免除になります。今後の収入が確保しづらい場合などには、早期に自己破産をし、少しでも将来のための備えを作る方が経済生活の再生につながることが多いです。

次に、③期間が長くなることですが、特別な事情がなければ、自己破産は1年前後で全ての手続が終了することが多くあります。
他方、小規模個人再生等の民事再生では、3年(特別の事情があれば5年)の期間がかかります。借金の返済に追われていた時、「早く楽になりたい。」という気持ちがあったと思います。小規模個人再生の利用により、毎月の支払額は減少しますが、もうその時には気持ちの面がついていかないこともあります。

自己破産手続か小規模個人再生かの選択は大変悩ましい問題です。
法律の専門家である弁護士に相談することで、後で後悔しない選択が可能となることも多くあります。
また、個別的な事情を弁護士に相談することで、ご本人様の生活状況、年齢、収入状況、精神的な状況等を踏まえた実状に沿う解決方法が見つかることもあります。

Q 小規模個人再生手続の注意点は?

小規模個人再生手続の注意点ですが、次の点です。
①途中で挫折したら破産手続になる可能性が高い
②保証人に請求がいく

まず、①小規模個人再生が、途中で挫折した場合についてです。
債務の免除、期限の猶予を得たからと言って、債務を返済していくのは決して容易ではありません。
また、終身雇用が崩れている現在では、安定した収入が必ずしも続くとは限らず、返済を継続していくことは難しいこともあります。

小規模個人再生手続の申請をした時点で、通常、債務の期限の利益を失います。分割払いができなくなり、一括払いを請求されるということです。そのため、仮に小規模個人再生が不成功に終われば、一括払い金を支払えず、破産手続に移行せざるを得なくなります。
したがって、小規模個人再生を利用するかどうかは、慎重に検討する必要があります。

弁護士に対し、ご本人様の事情を説明してアドバイスを受けることにより、選択を誤ることをかなり減らすことができます。

次に、②保証人に請求が行くことについてです。
ご本人様が、小規模個人再生手続を利用すると、期限の利益喪失となり、保証人に対して、保証債務の一括請求がなされます。

ご本人様は小規模個人再生手続の成功により、債務の減額、債務の期限の猶予を得られます。
しかし、小規模個人再生手続の効果は保証人には及ばず、保証人は債務の減少、債務の期限の猶予を得ることができません(民事再生法238条、177条1項)。そのため、保証人に過度の負担が生じることがあります。

このような場合には、弁護士にご相談ください。保証債務の任意整理、保証人も含めて小規模個人再生手続を申請する方法等により、保証人の過度の負担を減らすことが可能となる場合があります。
また、保証人に上記の手続等をとってもらうのは頼みづらいと思いますが、弁護士が、保証人に対し、ご本人様の代わりに手続をとる必要性等を説明することもできます。

なお、非免責債権は、小規模個人再生によって債務免除となることはありません。この点も注意されてください。

Q 給与所得者等再生手続はどのような手続ですか?

給与所得者等再生手続とは、小規模個人再生手続の特則となります(民事再生法239条1項)。
つまり、小規模個人再生手続を申請できる方のうち、給与所得者向けの手続になります。また、特則であるため、特別な規定がない限り、小規模個人再生手続と同じ内容となります。

給与所得者等再生手続が利用できる条件は次のとおりです(民事再生法239条1項)。
①小規模個人再生手続を利用できること(小規模個人再生のQ&Aで条件をご確認ください)
②給与(定期的な収入も可能)を得る見込みがあり、かつ、その給与額の変動の幅が小さいこと

Q 給与所得者等再生手続のメリットは?

給与所得者等再生手続のメリットですが、小規模個人再生のメリット(自己破産を回避、資格制限を回避)に加えて、次のような点があります。
①債権者の同意不要
②頓挫したときに、まだ小規模個人再生が利用可能

具体的には、小規模個人再生手続では、債務の減額、支払猶予等について、債権者の過半の積極的な反対があれば不成立となります。
しかし、給与所得者等再生手続では、債権者の過半の反対があっても、債務の減額、支払い猶予等が可能となり、確実性が高いという点がメリットになります。

どうしても、自己破産を回避したいという場合には給与所得者等再生手続の利用を検討されてください。給与所得者等再生手続が頓挫しても、小規模個人再生を利用できる点でも、その点はメリットになります。

Q 給与所得者等再生手続のデメリットは?

デメリットですが、次のような点があります。
①最低弁済額に「可処分所得基準」が追加される
②保証人に請求が行く
③借金の一部は返済必要

可処分所得基準とは、わかりやすく言えば、給与から生活費を除いた金額(可処分所得)の2年分を最低限支払うということです(民事再生法241条2項7号)。

給与所得者等再生を利用した場合の債務の支払期間は、小規模個人再生と同じく原則3年(特別の事情があれば5年)です(民事再生法244条、229条2項)。
仮に、可処分所得の2年分を2年間で支払うのであれば最低限度の生活を強いられますが、3年から5年で支払いますので過度な負担にはなりません(ただし、それでも苦労はあります)。
なお、可処分所得を計算する際の生活費は、「最低限度の生活費」となり、民事再生法上金額が定められています。

給与所得者等再生手続の利用を検討する際には、弁護士に相談することで、ご本人様の実情に沿ったアドバイスを受けることができ、できる限り間違いのない選択をとることができます。
そして、上記の最低限度の生活費等の計算も、弁護士に依頼・相談することによって、煩わしい手間等がかなり減ります